命日

 
高校2年の時、
 
1学期に廊下から2番目の一番前の席だった。
廊下側には背の高いT羽君と言う男子、
1年の時も同じクラスだったが、
特によく話したりするわけでもなく、
ただのクラスメートだった。
 
T羽君はY野君の友達だった。
Y野君の方がフレンドリーで、
女子とも気軽に話したりしていた。
私もY野君とはたまに話したりしたが、
T羽君はただ笑顔でそばにいるだけな男子だった。
今で言うと母親目線になってしまうが、
彼らはともに長身でテニス部に所属の、
爽やかな清々しい高校生コンビだった。
 
T羽君とY野君は、うちの近所の都営団地に住んでいた。
そこを通って学校に行っていた私は、仲の良い彼らの姿をよく見かけた。
 
夏休みまであとわずかの7月、
私はふと、T羽君の元気のなさが気になった。
気になったと言っても、すごい気になったわけではない。
ふと、顔色が悪いな、と感じただけだった。
授業中、T羽君は居眠りをしていた。
彼にとっては珍しくもないことだった。
ところが私はそのときなぜか、
(鳥羽君、元気ないのかな?)
と感じたのだ。
私はT羽君に恋心を抱いていたとか、そういうことは全くなかった。
授業が終わって休憩時間になってT羽君は起きた。
私は、
「T羽君具合悪い?風邪でも引いてる?」
と聞いてみた。
「いいや、平気だよ?」
やはりT羽君は特に変わったこともなさそうだった。
 
 
 
 
 
 
夏休みに入った初日だった。
緊急連絡が入った。
T羽君の訃報だ。
私はびっくりした。
T羽君とY野君はチャリ小僧だった、
前屈みになって乗る、タイヤの細いスピードの出るやつに乗っていた。
2人は夏休みに入ってサイクリングに出て事故に遭ったそうだ。
T羽君の自転車のブレーキに原因があったらしい。
 
みんなショックだった。でも1番ショックを受けたのはY野君だったと思う。
だから、詳しいことはあまり聞けなかった。
でも現実を受け入れるだけで他に何を知る必要もなかった。
私は、T羽君の元気がない時に、
もっとなにか言ってあげればよかった。
体調気をつけてね!!とか・・・
なんでもいいから、なにかを気付かせてあげられたらよかった・・・
 
同窓生たちはT羽君とお別れしに集まった。
 
 
 
 
私はその時のT羽君の顔を忘れない。
 
 
 
 
実家との往復の経路で、
T羽君の事故現場を必ず通る。
急カーブの連続した後に途中に神社がある坂道で彼は旅立った。
最近、長男が自転車に乗るようになった。
私はそこの坂道で長男にT羽君のことを話す。
通るたびに必ず話すのだ。
長男は悲しげな顔で聞いている。
「気をつけるよ。」
いつもそう言う。
 
私は7月の21日を忘れない。
いつもT羽君のことを思い出すよ。
T羽君というクラスメートがいたことを。
当時お墓参りしていた人がいたが、
今はどうしているのだろう。
私と同じように、毎年T羽君のことを
思い出していればいいなと思う。
 
 
 
 
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