マイノリティ(長文・ちゃんと読んでくれる人以外は読まないでください)①

 
交代勤務の同じシフトで働く人(女性)の話。
柔和な顔をして笑う短髪小柄で小太り・・・御歳58歳、
申し訳ないが見た目が本物のおっさん、
電気工事屋さんが穿くような作業ズボンをはいて、
ちょっと猫背で歩く姿はモロ・・・
 
同じシフトに女性は3人、
私がそのシフトに初めて入ったのは3月だった。
(もうひとりはフィリピンの39歳の人、同じラインなので顔見知りだった。)
 
ラインが違うので接点は無いとは思ったが、
私は一応そのおっさんおばさんに、
 
はじめまして。分からないことがたくさんあると思いますので、
いろいろ教えてください。よろしくお願いします。
 
と挨拶した。
すぐ大震災が来たので、その後2カ月はまともな仕事をしてないが・・・
 
夜中の昼休憩をそのおっさんおばさんと一緒に取った。
一緒に取ったと言っても、同じテーブルで夜食を食べて話をしただけだ。
同じスペースの他のテーブルには男性の夜勤者が数名いた。
 
おっさんおばさんは賢い人だった。
いろいろなことを知っている。雑学と言うか・・・
そしてオタクだった。特にアニメなんかは語り出すと止まらない。
時々応えて話しても、彼女は私の話は聞かない。
私は2割の力で聞いて、ムーディー勝山のように右から左へ受け流していた。
 
おっさんおばさんは、前職、前々職と、いじめられることが多かったそうだ。
わからなくもないが・・・
涙を浮かべて話した。
ちょっとだけかわいそうになった。
 
私はおっさんおばさんと向かい合い、
正面から顔を見て話を聞き流していた。
適当に。
 
おっさんおばさんは勘違いしたんだろう。
私が一生懸命話を聞いているんだと。
この人は私の理解者だ、と勘違いさせたのかもしれない。
ただの交代勤務の同じシフトのメンバーだってだけなのに。
 
おっさんおばさんは私にどんどん入り込んできた。
今度お茶でもしましょう、食事行きましょう、
私は、いいですね~~!とノリで答えていた。
まぁ、まず無理だろうとは思っていたけど。
 
だって、勤務が勤務だし。
日勤の時は子どものところに行くし、夜勤ではいつも疲れているし、
休みの日は家でのんびり家事か、ツーリングだし。
おっさんおばさんと遊んでる暇なんてないさ。
 
おっさんおばさんは、車通勤だが、
会社の指定の遠いところの駐車場に停めている。
そういう人はたくさんいるけど、みんな夜勤の時は会社の隣の駐車場に暗黙の了解で停めている。
でもおっさんおばさんはそれをしない。
 
梅雨の頃からだった。
雨の夜中を歩いて遠い駐車場に行くのも気の毒だと思い、
会社の隣の駐車場に停めてる私は、
おっさんおばさんを彼女の車が停まっている遠いところの駐車場に送った。
そしてそれが夜勤の間はほぼ毎回になってしまった。
(ただしボランティアに行く前の前の週まで・・・
ボランティアに行く週は私はおっさんおばさんをぶっちぎって帰った。)
 
そこに寄らなければ、仕事が1:30に終わっても、家につくのが1:40前後なのだ、
だって、夜勤をやるために引っ越したと言ったって過言じゃないくらいだから。
けれど、送っていくとどうしてもプラス10分はかかる。
夜中の10分は日中の30分に値する。
時間とガソリンがもったいないと思っていた。
 
私はおっさんおばさんに隣の駐車場に停めたらいいのに~
全然平気ですよ、ガラガラだし総務だって大目に見てくれますよ!と言っていた。
 
しかしおっさんおばさんは、駐車許可証にバッチリ駐車場指定されてるからマズイよ。と言う。
 
だったら夜勤のときだけでも許可してもらえばいいじゃないですか~
私だって車通勤ダメな距離だけど、夜勤の時だけは許可してもらったんですよ~
と言っても、そうだね。といってなかなか総務に許可を貰おうとしない。
 
私は会社と家が近いので交通費が出ない。
それなのに交通費を貰ってる人をプラス10分もかけて送っていくことに不満を抱いた。
おっさんおばさんの融通の利かなさに苛立ちを抱いた。
 
それとはうらはらに、おっさんおばさんは私にどんどん好意を持っていったようだった。
勝手に親しくなっていると勘違いしていたようだ。
 
ある雨の日、駐車場に送っていく時、お茶したい気分だ沈んだ感じで言っていたので、
1度だけ24Hのファミリーレストランでお茶をした。
彼女は落ち込んでいたようだったから・・・
 
おっさんおばさんがボランティアに行く2週間前だった。
その不安があったのかもしれない。
私はおっさんおばさんの2週間後にボランティアだった。
 
しかし大した話は無かった。
いつも通り、会社の愚痴だ。
私は3時過ぎに帰ろうと切り出した。
 
ある日、カラオケ行こう、今夜でもいいよ、と言ってきた。
1000円しかないけど。だって(;・∀・)ハッ?
 
1000円じゃ無理だろ、と思い、
そこの招き猫行きますか?今だと夜中のフリーでワンドリンクで、
950円でイケますよ!と言ったら、
お金ある時にしようか~と柔和な顔で笑った。
私はほっとした。
 
おっさんおばさんは空気を読まない。
人のことを考えない。
 
おっさんおばさんは夜勤の週にボランティアに行った。
行く前は皆の前で大騒ぎだった。
だから私は、来週は○○さんボランティアでいないから淋しいな~と言った。
 
おっさんおばさんは出発から1日の作業終了時、帰路のバスの中から、
その都度始終ショートメールをよこした。
私はショートメールは嫌いだ。
電話代かかるし。
でもおっさんおばさんがショートメールにしてくれと言うから。
第一、文字数考えて送らなきゃならなくて、めんどくさい。
 
おっさんおばさんは、初日の夜に俳句を送ってきた。
ボランティアの現場で悠長に俳句とは・・・( ゚д゚)ポカーン
詩人ですね~と返信した。
 
 
おっさんおばさんのいない夜勤の週、
平和だった。
夜中の昼、フィリピンの人と一緒に食事をとり、2人で語り合った。
彼女はおっさんおばさんとは話をしないのだ。
 
その日、彼女の子供のこととか、私の話も聞いてくれて、
会話がキャッチボールのようだった。
 
そんな会話はつかの間でいい。
聞いて聞かれて、少しだけ記憶にとどめ、
そっとしておくに限る。
適度なリラックスのある休憩時間、ほっとするひとときだった。
ほっとできる週だった。
 
その週の最後、おっさんおばさんの帰ってくる日だ。
 
私は業務残り30分の頃、作業がちゃんと終わるかどうか、焦っていた。
1時間前から、翌日にエアコン掃除が入るので、機械や製品にビニールをかけてくれ、と
頼まれていたのをやっていた。
チビの私は高い機械にビニールをかけるのに苦労していた。
 
そこへ、おっさんおばさん登場。
超超超びっくりした。
あ!どうもお疲れ様です。
とはいったけれど、困惑した。
私は業務の続きを早くやりたいのだ。
おっさんおばさんはお土産産買ってきたよ!と私に話しかけてきた。
ええ~?!そんなのいいのにぃぃぃ。と、手を動かしながら話を聞いた。
 
そこへこの勤務の責任者であるヤングの社員の男の子が来た。
おっさんおばさんのいる前であと30分です、ピッチを上げてもらえますか。と言ってきた。
はい。と答えたが、俺じゃねぇよ、おっさんおばさんが邪魔すんだよ。と思った。
彼も私にだけ言ったんじゃないとは思う。おっさんおばさんに聞こえるように言ってたし。
 
私はもう、おっさんおばさんに目もくれず、
黙々とビニールをかける作業を再開した。
おさーんおばさんは、そのうち、他の男性従業員の方に行って、
(ボランティアに)いってきたどーーーと言わんばかりにアピールしまくっていた。
 
私はげんなりした。
順番が来りゃーーみんな行くんだよ、(希望者だけだが。)
おめーー仕事休んでボランティア休暇バッチリ取って行ってんじゃん。
と、うんざりした。
 
高いところは男性が手伝ってくれて、
なんとかビニール掛けが間に合った。
ピョンピョン跳び上がってかけたりしてたので、
超疲れた日だった。
 
さて帰ろう、と車で走り出したら・・・
帰り路に、車で停車しておさーんおばさんが私を待ち伏せしていた。
 
ゲッッッッッ!!
 
もうね、それが限界の1歩手前だった。